修練館道場長-渋谷力の思い

今回は、1990.6.27付け「明日への話題」に掲載された、新日本製鉄副社長 古賀憲介のタイトル「好きな言葉」を掲載します。

「不将 不迎 應而 不蔵」(荘子)

  • 不レ将=オクラズ=過ぎ去った事をくよくよ悔やまない
  • 不レ迎=ムカエズ=先の事をあれこれと取り越し苦労をしない
  • 應而=オウジテ=事態の変化に対応して
  • 不レ蔵=ゾウセズ=心に何もとどめない

私がこの言葉に出会ったのは五十歳前後、公私共に事の多いころであった。たまたま、先輩の宇野哲人先生が遺著「一筋の道百年」の中で自分の処世の信条として後輩にも推奨されているのを拝見して、早速「座右の銘」として頂戴することにした。

白寿(九十九歳)を迎えた先師が、五十=天命ヲ知ル、六十=耳順、七十=心ノ欲スル所ニ従ヒ矩(のり)を踰(こ)エズ の域を経て、最後に到達されたのがこの心境ということになる。
某日、三菱商事の諸橋晋六社長から、厳父諸橋轍次先生から「不将 不迎」を人生の教訓として授かったことを伺った。
中国哲学の泰斗で、それぞれ長寿を全うされた両先生が、この荘子の言葉を重用されたことは、誠に示唆に富む話である。
不将(オクラズ)、不迎(ムカエズ)、どちらもやや消極的な感触を与えるが、應而(オウジテ)、不蔵(ゾウセズ)、眼前の歴史的現実に全力を挙げて正しく対応して亊あれば心に残すところ無しというのは、実は最も積極的な力強い生き方を示唆している。

宇野先生は白寿祝賀会の席上「私の長生きした原因は、つまり色んなことにクヨクヨいつまでもしない、取り越し苦労をしない、そして、事が済んだらさっさと忘れてしまう」とさとされている。まさに人生の達人の心境であろう。思い煩うことの多い時、この言葉をくちずさむと、清涼の風が一瞬、胸中に吹き渡る心地がする。

「不将 不迎 應而 不蔵」はタイトル同様、私の好きな言葉でもあります。私も手元にある資料を読むと、いつも爽やかな心を感じることができます。この言葉は、上記の文中の諸橋轍次先生が書かれた「中国古典名言事典」の荘子の章P.354に記載されています。また、五十=天命ヲ知ル、六十=耳順、・・・・・・・・の文も、論語の章、P.24の十有五にして学に・・・・・・・・・・・・・として詳しく記載されています。
また、泰斗(たいと)とは泰山北斗(たいざんほくと)、泰山と北斗七星。転じて、その道で最も世に仰ぎ尊ばれる人のことであります。

平成30年 皐月
端午の節句の頃


習錬館_渋谷師範


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